第55回全国大学ラグビー選手権大会準々決勝 慶應義塾大学vs.早稲田大学@秩父宮ラグビー場



6日前に大阪で京産大に勝って迎えた今日の慶早戦。1か月前のリベンジの舞台だったのですが、試合前から小雨が降るコンディションでした。





前半は早稲田のキックオフで試合開始。キックオフのボールをいきなり慶應ノックオン。雨の影響が出たのか、あるいは緊張感からなのか、先が心配になるミスがいきなり出てしまいました。このミスをきっかけに自陣で展開されて、3分であっさりと先制トライを許してしまいました。


しかし、開始直後のミスを帳消しにするようなプレーが前半8分に出ました。早稲田がマイボールを自陣深くに戻し、タッチに逃れようとしたキックを、WTB宮本瑛がチャージしてそのまま中央付近にトライ。コンバージョンも決まって7−5と逆転に成功。


その後は慶應がボールをキープしながら攻めるシーンが目立ち、前半30分前後だったか、早稲田陣のゴールライン寸前まで迫ったのですが、トライを奪うことが出来ず。試合が終わって振り返ると、この時間帯でトライを奪って帰ってこられなかったことが勝敗に直結してしまったかなと思いました。前半終了間際に早稲田が慶應陣に深く攻め込んだ時には、きっちりと逆転トライを奪いましたから、尚更ね。前半は7−12の5点ビハインドで終了。


後半開始早々、慶應が自陣10mラインから少し入ったあたりでペナルティをとられ、早稲田がPGを選択。決まれば1トライ1ゴールで追いつけない点差になるということで選択したのでしょうが、このPGを決められず。強気にラインアウト→トライを狙わず、しかもPGを外したので、この時点ではまだ慶應にとってツキがあると思いました。


今日の試合、スクラムはほぼ互角、モールで押し勝つシーンがたびたび見られました。後半10分過ぎに第1列の2人を入れ替え、早稲田に対して更にFWで圧力をかけた結果、後半15分の同点トライ、24分の逆転トライにつながりました。


残りは15分。自陣に攻め込まれるシーンもありましたが、試合時間を経過しても、慶應らしい低く鋭いタックルで相手の攻撃を前でしっかり止めることが出来ていました。早稲田バックス陣のパス回しに翻弄されるシーンが前半は難度かあったものの、後半に入ってからはそれを許しませんでした。


早稲田も逆転を許した後の攻撃の中でハンドリングエラーをしてくれたおかげで助けられる中、試合終了に向けて時間は経過。残り1分になった所で、自陣22mラインのすぐ外付近でマイボールスクラムを獲得。しっかり押して、後半40分経過のホーンが鳴るまでボールをキープすれば逃げ切り勝ちという展開。スクラムを1回組みなおす間に残りは30秒弱に。これまでFWが頑張ってくれていたように、この場面でもスクラムをしっかり組めていれば問題はなかったはずなのですが、コラプシングの反則を犯し、早稲田が慶應陣5m付近からのラインアウトに。


ラインアウト後、早稲田は基本的にはFWにこだわって逆転のトライを狙いにきていたのですが、バックスに回すシーンが何度かありました。それでも翻弄されることなく慶應の各選手が止めてくれていたので、相手がミスをするまで耐えられれば凌げたかもしれなかったのですが…


ホーンが鳴ってから約5分後、早稲田がバックス攻撃に転じて、最後の最後で右隅に逆転トライを許してしまいました。トライを許さない慶應の粘りに対して応援するべく、立ち上がっていたファンも、逆転トライを許した瞬間、まるで時間が止まったかのように凍り付いてしまっていました。自分はメインスタンド(西側=慶應側)の22mライン付近の前から8列目にいましたが、自分より前列にいた観客がほぼ全員そんな感じでした。


試合終了まで残り20〜30秒くらいまでは、準決勝進出の権利をぐっと手元に手繰り寄せられていたのに、そこでその手の力が少し緩んだ隙に、相手側にチャンスが行ってしまい、最後は正月越えの権利自体が早稲田に行ってしまいました。


1か月前の慶早戦慶應が終了間際に7点を追う状況で、最後に敵陣深くで攻め続けたのですが、ノックオンの反則でノーサイドに。そして、今日は有利だったはずのスクラムで反則をとられ、勝利を逃すことに。2010年シーズン以来の、秋の公式戦での早稲田戦勝利に向けての大チャンスだったのですが、逃してしまいました。まるで「早稲田に勝ってはいけない」と言われているかのよう…。




試合終了直後、両チームの選手はバックスタンド側へ挨拶に行くのですが、負けてシーズンが終わってしまった悔しさで嗚咽している選手がいるのがすぐに分かりました。その中で、自分が真っ先に目が行ったのが背番号12の選手。昨シーズンも彼は主力選手として出場していました。今の4年生とも一緒に試合出場してきたことが多かっただけに、1試合でも多くプレーしたかったという思いが人一倍強かったんでしょう。


彼は3年生なので、もう1シーズン、タイガージャージのユニフォームを着て戦うチャンスがあります。来シーズンの主将が誰になるのかはわかりませんが、あの姿を見ると、候補の1人にはなるのかなと個人的には思いました。(内情を分かっていない上での個人的なコメントです)


メインスタンドに戻ってきて、リザーブメンバーを含め、一列に並んでファンに一礼した後、特に4年生メンバーは目からこぼれてくるものを抑えきれない選手が目立ちました。4年生にとっては、大学選手権での敗戦=大学ラグビーからの引退となるわけで、毎年このようなシーンが訪れるわけですが、グラウンド上でこれだけ涙を流して終わる選手が多いシーズンは、ここ最近ではなかったように思います。選手達だけでなく、観客席のファンの中にも同様に目を潤ませている人が散見されました。私もそんな中の一人です。ラグビーの試合のスタンドで涙を流したのは、改修前の花園ラグビー場に行けることが決まったあの試合(第53回の大学選手権3回戦)以来かな?


今の4年生の代は、慶應義塾高校3年生の時代に、桐蔭学園高校に勝って、全国高校ラグビー選手権大会に神奈川県代表として単独出場した世代、いわゆる「黄金世代」と呼ばれた世代でした。今年のAチームのメンバーは、付属高校上がりの選手が主体ですが、そのメンバーに外部進学のメンバーを加え、個々の能力は非常に高く、かつチームとしてもまとまっているチームでした。


主将として1年間チームを引っ張ってきた古田選手は、慶應義塾大学蹴球部史上初の医学部生主将。試合中はタイミングをみながら、フィールド上で的確な指示を出していました。また、完全に任せられていたセットプレーでのキックの精度は非常に目を見張るものがありました。今日も最後の3本目が、ポストに当たらずに間を通過していれば…


古田主将がメインスタンドの観客に一礼した後、グラウンドに手を叩きつけて叫ぶことで露わにしていた悔しさ。この姿を下級生のメンバーは目に焼き付けて、心に刻んでおいてほしいと思います。


結果的には準々決勝敗退という形で終わってしまいましたが、ここで終わってしまうのは非常にもったいないチームでした。あと1試合、2試合、プレーを見たかった… 自分の中では、印象に残る世代の一つになると思います。


「黄金世代」は卒業してしまいますが、来シーズンは最低でも今年の成績を上回ること、そして最終目標としては対抗戦Aグループ優勝と大学選手権日本一を掲げて、鍛錬に励んでほしいと思います。来年は蹴球部創部120周年ですから。


そういえば、4年前に花園に出場した慶應義塾高校は3回戦で御所実業(奈良、最終的には選手権準優勝)にロスタイムで勝ち越しトライを許して敗戦。今年の4年生の代は、またも最後の年にロスタイムの壁に阻まれてしまったのだなあと。