5日前(9/25)、イーグルス田尾監督の今季限りでの解任が発表された。

  • 解任されるべきとしたら誰か?

球団創立元年の今年の成績は、38勝97敗1分。レギュラーシーズン1位で終了したホークスとは51.5ゲーム差をつけられた。このゲーム差は1961年に近鉄がシーズン103敗した時に記録したのと同じ差である。結果だけ見れば、芳しい成績とは到底言えない。このような結果になってしまったのは、球団創立時に生じた選手分配が大きな要因だと思われる。昨年、パリーグ5位と6位の2球団の選手を2つに分けて、新生オリックスイーグルスが出来た。分配ドラフトで選手を分けたのだが、最も有能な選手20名が最初にオリックスに指名され、残された選手の中からかき集められて出来たのがイーグルス。岩隈や磯部など、オリックスに所属することに難色を示してイーグルスに行った主力級の選手もいたけれど、それはごく一部。チーム全体として見れば、1シーズンフルに満足に戦い抜ける戦力ではなかった。他球団に比べると薄い選手層を田尾監督はじめ首脳陣がどうにかやりくりしつつ、1シーズンを戦い抜いた。この戦力であれば、どんな有能な監督が指揮をとっていても似たような成績になっていただろう。
分配ドラフトでいい選手がとれなければ、外国人で戦力を補うという方法があった。投手、野手とも数多くの選手を獲ってきたが、1年間フルに働いて、満足な成績を残した選手は1人もいなかった。既に解雇されてしまった選手も何人かいる。こうした観点から、良質な外国人を連れてくる役割を果たさねばならないスカウト陣に責任があるとも言える。
シーズン開始前、H編成部長がシーズンの勝利数予想をしていた。岩隈がx勝、一場がy勝…などとカウントして、「全部で70勝してPO争いに絡む」とかなりの過大評価をしていたけれど、この予想とその方法が大きな誤り。戦力分析が全く出来ていなかったこと、そして野手の打撃力・守備力を考慮することなく、投手陣の勝利数だけで判断するという無能さ。こんなデタラメは予測にもならんということは素人でも分かることなんだけどね。こんな人が編成担当にいれば、球団の癌にもなりかねないのでは。

  • 球団は戦う選手とファンをもっと大事にしろ!

田尾監督は当初3年契約だった。田尾さんがプロ球団のコーチ経験がないことやチームの戦力を考えれば、「3年間時間を与えるから、それまでにしっかり戦える(PO争い、欲を言えば優勝争い?)チームを作ってくれ」というメッセージが監督に与えられたものだと思っていた。それが「1シーズン終えて成績があまりにひどすぎるから解任」というのは話が違うのではないか。11連敗が2度あるなど、勝てない日々が続いたけれど、地元・仙台のファンは最後まで決して見捨てることはなかった。(昨年のファイターズでも、勝てない時は札幌のファンが球場から離れかけた時期があったのに) 仙台の最終戦の終了後には、20分にもわたって球場から田尾コール、そしてシーズン最終戦@福岡では選手達に胴上げもされた。現場もファンも、来年も引き続いて田尾監督率いるイーグルスであって欲しかったということは、グラウンドやスタンドを見れば一目瞭然だった。現場で戦う選手達、そして熱烈なファンからのメッセージをオーナーはじめ球団関係者はどう捉えているのだろうか。ファンはチームの勝利だけを目的として球場に来ているわけではない。もちろん勝つに越したことはないのだろうけど。一方で、球団とオーナーは徹底した「勝利至上主義」。ファンと球団側の考え方には大きなギャップがある。球団側はもっとファンに歩み寄る姿勢を見せなければ、今年熱心に応援していたファンは少なからず球場から遠ざかることになるだろう。もし俺自身がイーグルスのファンであれば、田尾監督の解任をきっかけにファンを辞めたであろうということは言うまでもない。 (個々の選手の応援は陰で続けるであろうけど)
田尾さんはこんな環境の中でよく頑張っていたのに、結果が出せなかっただけで即解任。非常に不幸であったと思う。もし今後、監督やコーチとして現場の仕事に携わる機会があれば、現場のことをもっと理解してくれる球団、戦力がもう少し充実した球団で指導出来ることを切に願っている。

  • 最下位球団の単年黒字はそこまで誇るべきことではない!

開幕時に15億円の赤字の見込みが、シーズン終了時ではやや黒字になりそうとの報道がなされた。スポンサー料やグッズの売れ行きが大きかったのが主な要因だそうだ。これで成績が伴ってくれば、誇るべき「黒字」になったであろう。しかし結果は最下位。選手の人件費も外国人の不振等により、当初の予想よりかなり少なく済んだようだ。
成績を上げるためには、外国人獲得や他球団からのトレード、ドラフトによる大物選手集めが少なからず必要である。そのためには当然ながら多額の費用がかかる。金をケチって、リスクを冒さずして、チームを強くする、監督には結果を求めるというのでは虫が良すぎるのではないか。来年は大型補強をするという話もあるが、選手の補強状況に今後注目したい。

  • 次期監督は?

マスコミでは、現シダックス監督の野村さんが就任するのではと騒がれている。タイガースでは3年連続最下位と振るわなかったけれど、スワローズ時代は万年Bクラスだったチームを毎年のように優勝争いを出来るようなチームに変革した実績があり、監督として非常に有能な方だと思う。しかし、その野村監督でもスワローズを一朝一夕に強いチームに変えたわけではない。「1年目に種を撒き、2年目に水をやり、3年目に実を結ぶ」という3年計画でじっくりとチームを熟成させて、見事就任3年目でリーグ優勝。その翌年に日本一。このチームの変革には、監督の指導力だけでなく、古田捕手の貢献が非常に大きかったのではないかと思っている。いくら監督が指示しても、現場の選手が思い通りに動けなければ、いい結果は残せない。もし来年、イーグルスの監督をやることになれば、Mオーナーにお願いして、金もきちんと出してもらって、監督が欲しい選手を獲れる環境を作ってもらう必要があるだろう。
野村監督の「3年計画でのチーム作り」とMオーナーの「即結果を求める結果(勝利)至上主義」には隔たりがあるような気がする。来年すぐにチームの成績が急上昇せずに即解任なんていうMオーナーの醸し出す騒動の犠牲になられることだけは御免だ。

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野球界に限らずスポーツ界では、Mオーナーの本業のIT業界とは違って、すぐに結果を求めるだけではなく、結果が出るまでじっくりと耐えることも必要。チームの成績が悪いから、まるでもて遊んでいるかのように監督をコロコロ変えるのは「ヴィッセル神戸」だけで勘弁してもらいたいし、そんなことをやるオーナーに球団を持つ資格はない!